無菌性髄膜炎


【STAP1 症状と初期評価】

     発熱 5日以上遷延する場合に考える  頭痛 痛くて夜も眠れないというのが特徴的
     髄膜刺激症状 項部硬直の感度は低い。問診と診察で判断する
      問診(closed questionが必要) 歩行時に頭に響く 乗り物が段差を乗り越えるときなどガタンとした振動が頭にひびく
      診察 Jolt accentuationが有用 ただし、適応をよく検討する必要がある
       適応 ① 2週間以内の頭痛と37℃以上の発熱 ② 意識障害や神経学的巣症状を認めない(原則は細菌性髄膜炎の診断に用いない)

     羞明 明るいのが苦痛なので電灯を消してカーテンを閉める 屋内でサングラスやアイマスクを用いる  など 
     嘔気

Jolt accentuation

    ・自動あるいは多動的に頭部を一秒間に2-3回の速さで左右に回旋してもらい、頭痛が誘発・増強すれば陽性
    ・Jolt accentuationは髄液穿刺における細胞数増多について感度97.1%、特異度60%であるとされている。そこで、これが陰性であれば髄膜炎の可能性はかなり低くなる(negative likelihood ratio 0.05(0-0.35))。しかし、完全な否定はできない
    ・以下に記載されているように、髄液中の細胞数増加に対するJolt accentuationの感度、特異度を検証しているのであり、母集団は細菌性髄膜炎は僅かであり、ほとんどは無菌性髄膜炎
    JHeadache 1991 Mar;31(3):167-71 Jolt accentuation of headache: the most sensitive sign of CSF pleocytosis T Uchihara  1 , H Tsukagoshi PMID: 2071396 DOI: 10.1111/.1526-4610.1991.hed3103167.x
    Abstract
    We prospectively examined the clinical signs of 54 febrile patients associated with recent‐onset headache. They underwent lumbar puncture (LP) on suspicion of meningitis. The relation of each sign to cerebrospinal fluid (CSF) pleocytosis was estimated. Among 34 patients with pleocytosis, 33 had jolt accentuation(sensitivity: 97.1%), while only 5 of them had neck stiffness or Kernig's sign. Among 20 patients without pleocytosis, 12 had no jolt accentuation (specificity: 60%). We found jolt accentuation to be the most sensitive sign of CSF pleocytosis. If jolt accentuation is noted in a febrile patient associated with recent onset headache, the CSF should be examined even in the absence of neck stiffness or Kernig's sign.

【STAP2 腰椎穿刺】


      抗血小板薬については各施設の基準に準拠

IgG index


    ・細胞数が≧6/μLであれば基本的に異常と考えるべきであり、初期判定は以下を参考にして行う

     ・ HIVのスクリーニングは必ず行う

    【STAP3 無菌性髄膜炎診断後の対応】

     ・可能であれば脳神経内科専門医に依頼する


      ① 脳炎への進展の早期アセスメント
      ・無菌性髄膜炎の診断後に、もっとも注意すべき事は脳炎への進展である。痙攣や意識障害を起こすと生命の危険はもちろん大きな後遺症を残す可能性がある
      ・このため、無菌性髄膜炎は基本的に入院のうえ、丁寧に経過観察する
      ・脳炎への進展を疑う所見とは、精神症状(軽度の見当識障害のようなもの、おかしな事を言うなど)、不随意運動、痙攣、意識障害など。軽度の症状であっても時間〜日の単位で急激に痙攣や意識障害が出現する

      ② 原因の鑑別診断
      ・無菌性髄膜炎=ウイルス性髄膜炎ではない。ウイルス以外にも様々な原因がある
      ・しかしながら、ほとんどはウイルス性髄膜炎であり、数週間ていねいに経過観察しながら鑑別を行う
      ・ウイルス性以外の髄膜炎を疑えば再び腰椎穿刺が必要になることが多い

      参考文献)
      1. 髙岸勝繁「ホスピタリストのための内科診療フローチャート(第2版)」有限会社ニーニュ 2020
      2. 上田剛士「ジェネラリストのための内科診断リファレンス」医学書院 2014
      3.杉田陽一郎「研修医のための内科診療ことはじめ」羊土社 2022
      4.石井義洋「卒後20年総合内科医の診断術 Ver.3」第3版 中外医学社 2024
      5. 猿田享男 監修「1252専門家による私の治療 2021-2022年度版」日本医事新報社 2022.
      6. 岡秀昭「感染症プラチナマニュアルver.8」メディカルサイエンスインターナショナル 2023