四肢麻痺・対麻痺
・頸髄や胸髄など脊髄の障害が原因となることが多い
・突発性では外傷や血管障害を強く疑う
・様々な原因による末梢神経障害による場合もある

【評価】

 個々の疾患を示唆する所見

胃切除の既往や、極端な偏食がある 急性にしびれが出現し、その後、眼の症状と運動麻痺が生じる
亜急性の進行で脊髄麻痺 極めて緩徐に進行 温痛覚障害がある 急激な頸椎へのストレスの後に発症
誘因なく突然発症

    診断:

① 突発性の場合
・脊髄の血管障害を想定する。その原因として大動脈解離もあり得る
・稀ではあるが両側大脳や脳幹の病変もあり得る
・様々な原因による高度の頸椎や胸対の脊柱管狭窄を持つ患者が転倒した場合にも突発性の四肢麻痺、対麻痺が生じうる
・四肢麻痺の場合は ⅰ) K、Mgなどの電解質失調、ⅱ) ボツリヌス中毒、フグ中毒、ヘビ毒などの中毒も想定する

遷移する
  脊髄血管障害
遷移する
  中心性脊髄損傷
    ・脊髄中心部の損傷であるため、下肢に比して上肢の麻痺が重度
遷移する
  大動脈解離
遷移する
  周期性四肢麻痺
遷移する
  ボツリヌス中毒
② 緩徐に進行する場合
・脊髄の障害の可能性が高い
・頸髄であれば四肢麻痺、胸髄や腰髄であれば下肢の対麻痺が生じる
・頻度は低いが末梢神経障害でも生じうる
・四肢麻痺は筋疾患でも生じうる
遷移する
  ギラン・バレー症候群
    ・症状の進行速度はピークまで12時間〜6週間と非常に幅が広い
遷移する
  CIDP
    ・症状は2ヶ月以上にわたって進行あるいは再発を繰り返す
遷移する
  頸椎症性脊髄症
遷移する
  脊髄空洞症
    ・初期には解離性感覚障害などの感覚障害が中心であり、四肢麻痺、対麻痺が生じるのは進行例
遷移する
  多発性硬化症
    ・経過中には必ず、眼症状、中枢神経症状など対麻痺以外の症状が生じる
遷移する
  横断性脊髄炎
    ・腰痛や下肢の脱力、足先や下肢のしびれが突発し、急激に進行して対麻痺、膀胱直腸障害へ進展する
③ 末梢神経障害
・基本的には運動麻痺や筋力低下以外の症状が多彩に出現する
・スクリーニングとしてビタミンB12欠乏やビタミンB1欠乏をチェックすべきである
遷移する

遷移する
  ビタミンB1欠乏
    ・2〜3週間以上、十分な食物摂取ができていない場合には必ず想定する
遷移する
  ビタミンB12/葉酸欠乏
    ・脱力より失調症状(圧覚、位置覚などの障害によるぎこちない歩行など)が先行する

遷移する
  多発性単神経炎
    ・発熱があったり、炎症反応が高ければ血管炎も考慮する

遷移する
  MGUS
    ・POEMS症候群のような形質細胞異常関連疾患でも多発神経障害を生じることがある
    ・グロブリン値が上昇していれば、IgG、IgM、IgAを測定し、必要があれば免疫電気泳動を行う
参考文献)
1. 山本大介「みんなの脳神経内科」中外医学社 2021
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5. 德田安春「ジェネラリスト診療が上手になる本」カイ書林 2011
6. 德田安春 他「フィジカル大全」メディチーナ増刊号 vol.59 No.4 2022