症候
口腔乾燥症

【疫学】
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・本邦の報告では65歳以上の高齢者のうち27.6%が常時、口腔乾燥感があるとしている(*1)
・成人の約10%にドライマウスがある(*2)
・罹患率は高齢者の 12~39%であると報告されている(*3)
・60代以降の女性に多い(男女比は約 1:5)
【原因】
・心因性が最多であり、次いで薬剤性が多い
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・薬剤の服用が短期間の場合には唾液分泌への影響が少なく,長期間の服用で始めて唾液分泌低下や口腔機能低下による口腔乾燥症が自覚される。そのため、処方医も薬剤の副作用であることを認識していないことが多い
【評価】

シェーグレン症候群
甲状腺中毒症
- (患者の訴え)

・様々な問診票が工夫されている
(視診・触診)
・口腔粘膜の乾燥、唾液の正常、歯、歯科治療歴など
(唾液分泌量の測定)
吐唾法 紙コップに唾液を吐き出す ≦0.1ml/分を分泌能低下と判断する
・その他、ガムテスト、サクソンテスト、ワッテ法などがあるが歯科口腔外科の専門領域である
(画像診断)
・唾液腺シンチグラフィー、唾液腺造影,CT 検査,MRI 検査,超音波検査 など
(血液検査)
・スクリーニングとして甲状腺機能と糖尿病をチェックする
・抗 SS-A 抗体、抗 SS-B 抗体
(病理学的検査)
・口腔生検
◎ 体系だった診断法法は確立されていない
【治療】
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① 唾液分泌促進剤 サリグレン(保険適応はシェーグレン症候群のみ)、サラジェン(保険適応はシェーグレン症候群と放射線照射後遺症)
② 漢方薬 白虎加人参湯 麦門冬湯 五苓散 十全大補湯 八味地黄丸 柴胡桂枝乾姜湯 五苓散など 証に応じて用いる
③ 保湿剤 サリベートスプレー(保険適応はシェーグレン症候群と放射線照射後遺症) アズノール含嗽薬(保険適応無し) 市販薬でも様々な人工唾液(「口腔ケアスプレー」「口内保湿ジェル」)などのカテゴリーで様々な製品がある。高分子ヒアルロン酸含有のものが望ましい
④ ストレスや身体表現性障害が疑われる場合は、抗不安薬、抗うつ薬を検討する(ただし、両剤とも副作用として口腔内乾燥がある)。適宜、精神科、心療内科を紹介する
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参考文献)
1. 柿木保明.口腔乾燥症の診断・評価と臨床対応─唾液分泌低下症としてとらえる─.歯界展望 2000;95-2:321–332.
2. Murray T W, Poulton R, Mark B J, et al. Xerostomia and medications among 32-year-olds. Acta Odontol Scand 2006;64(4): 249-254.
3. Thomson, W. M.:Issues in the epidemiological investigation of dry mouth, Gerodontology, 22:65~76, 2005.
4. 須佐岳人 他「ドライマウス(口腔乾燥症)の基礎と臨床」 KMJ THE KITAZATO MEDICAL JOURNAL 2024;74:271~282
5. 柿木保明 「口腔乾燥症の病態と治療」日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 7 : 136-141, 2015
6. 伊藤加代子「口腔乾燥症の基本的な診査・診断と治療」老年歯学 第 32 巻 第 3 号 305-310 2017